孤独死、残された猫:それは未来のあなたかもしれません
当記事は、ご遺族の方から、当サイトへの掲載許可をいただいた上で掲載しております。ご遺族の方は、このような悲劇が、繰り返されない事を心から願われて、公開を許可してくださりました🙏
今回の現場は、当会で依頼を受けたわけではありませんが、結果的に、現場に立ち入る事になった為、それまでの経緯を記載しております。
3月4日
13時52分、江戸川区の某団体の代表(以降、Zさん)から、孤独死の現場に残されている猫を捕獲する為、私たちが持っている捕獲器を貸して欲しいとの連絡がありました。部屋の内部の写真も添えられていました。
私が、当会を立ち上げる前に、とてもお世話になったボランティアさん(以降、Aさん)と一緒に室内に立ち入りするとるとの事だったので、手持ちの捕獲器は全て貸出中でしたが、そのうちの1台を一時的に回収して、19時少し前に、Zさんの家まで届けに行きました。Zさんも、私も別件の予定時間が迫っていたので、捕獲器の引き渡しのみ行い、詳細は伺いませんでした。
3月13日
Zさんから、予定していた2匹ではなく、3匹を捕獲したとの報告がありました。
3月14日
10時半、Zさんの家の外まで捕獲器を回収に行きました。Zさんは、不在だった為、この時も詳細は伺いませんでした。
3月20日:12時37分
Aさんから緊急の電話が入りました。
お昼、Zさんが、親族の方の立ち合いの下、猫が取り残されていないかの最終確認をする場を設けていたけれども、Zさんは来ておらず、中を確認したくても、一人では手が足りず、短い時間で全部屋を確認するのは難しい、諦めるしかない状況だという悲痛な叫びでした😰この時、初めて、現場がどんな状況なのか詳細を伺いました。
※Zさんが連絡もせずに現場に来なかったのは、保護した猫のトライアルお届けに行っているからと言っていたそうです。
現場は、Zさんが親族から依頼を受けており、当初、Zさんは、Aさんに対して、某団体として手伝う仲間は沢山いるから、Aさんには、少しだけお手伝いをお願いしたいという話だったそうです。
ですが、某団体からは最後までZさん以外、誰一人来なかったそうです。事実、私たちが立ち入りをした際にも、誰もいませんでした。
一日に何度も現場に通い、捕獲器を設置したり、餌を置いて食べているかどうか減り具合を確認し、室内から3匹を捕獲したのもAさんだったそうです。
電気を点ける事もできない現場で、懐中電灯の灯りひとつ、日が明るいうちだけなら兎も角、深夜にたった一人、孤独死された現場に立ち入りする気持ちを想像してみてください😢
Aさんからは、捕獲した3匹は、Zさんに引き渡したと聞きました。保護した3匹の里親募集にあたっては、某団体の他、別の団体も手伝っていました。
3月20日:現場へ到着
Aさんに、私で良ければ現場に向かうと伝え、親族の方への立ち入り許可と、時間を伸ばしてもらう交渉をお願いしました。その間、私は、現場に行けるメンバーがいないか、片っ端から連絡を入れ、現場に急行しました💨
13時45分に現場に到着しました。
現場には予定より遅れてZさんが来ていました。その他、Aさん、親族の方2人、当会からは、代表である私とスタッフ2人(1人は少し遅れて到着)が集まりました。
3月20日:立ち入りの目的
Aさん、私、スタッフ2人が、すぐに立ち入りを開始しました。Zさんは、玄関付近にはいましたが、なぜか入ってきませんでした。そして、いつの間にかいなくなっていました。理由はわかりません😳
飼い主が生存している崩壊現場、飼い主が亡くなってしまった現場、どちらの現場だとしても、残された人らの証言は曖昧です。真実を話してしまって、責められたくないと思う気持ちや、早く今のこの状況を終わらせたいと、自己防衛の真理が働くからです。また正常な判断ができなくなっているからこその結果だという事を忘れてはなりません。
衰弱している猫は、狭い場所に隠れてしまっている場合もあります。餌を置いていても、食べられる状況でなくなっている可能性があるので、餌の減り如何に関わらず「どこかにいる」という前提で探す必要があります。
亡骸が、部屋のどこかに埋もれている場合もあるかもしれません。思わぬ場所に骨壷が置いてあったり、遺体を冷蔵庫にしまってある事もあります。
Aさんも、私たちも、どんな状況だとしても、衰弱している猫がいたならば救出して、亡骸があれば拾って供養してあげたいと思い、立ち入りを開始しました。
現場の状況
1階に台所と3部屋、2階に2部屋がある一軒家でした。
床だけでなく、あらゆる家具、(猫は高い場所にも上れるので)高い場所まで糞だらけでした。
悪臭も酷いものでしたが、多頭飼育崩壊の現場としては、5段階中1くらいの比較的マシな現場でした。
2月12日、近所の方からの通報を受け、警察が到着した際、窓ガラスを割って中に立ち入ってありました。その際、脱走した猫が、最低でも1匹いたそうです。
高齢の飼い主(女性)の方は、孤独死されており、ご遺体の傍で、1匹の猫が死亡していたとの事でした😢
飼い主の旦那様は、数年前に他界。
その後、しばらくの間は、旦那様の親族の方が、(旦那様の親の)介護の為に家に通っていたそうですが、介護の終わりとともに、訪問する事もなくなっていたそうです。
親族の方が通っている期間、飼い主は、主に2階を住まいにしていたそうです。1階から伺い知れる様子や臭い等から、親族の方は、薄々、自分の実家がテレビで見るような崩壊現場になっているのだろうと、分かっていたそうです😔(義姉に)何度か、説得を試みたけれど、頑固で話を聞いてくれなかったと、おっしゃっていました。
飼い主は、不妊・去勢手術をしないまま、猫を飼っていたそうです。
近所の方は、現場となった家について、あまり話したがらない様子でしたが、近所の方が、カラスが、ベランダから子猫を咥えて飛んで行っていった瞬間を目撃していた事があり、その事を飼い主に知らせにいくと「うちはちゃんとしている。うちの猫ではない❗️」と言っていたそうです。
また、Aさんと私の知人のボランティアさんが、15年位前から、この家の周辺で、多数の猫を保護していました。これまで保護してもしても続く野良猫の発生の原因が分からないままでしたが、飼い主の死亡という結果により、ようやく判明した形となりました😔
親族の方の話では、夫婦には子供がいなかった為、残された物は、国庫に帰属する事になるそうです。
(現場に来られていた、ご遺族の方の実家ではありますが)相続する立場ではない為、来る必要はありません。それでも、残された猫がいるのであれば助けてあげたいと思ったそうです。ですが、この日まで、何度も現場に呼び出され、遠くにお住まいだった事もあり、家族からは「いい加減にしろ」との反対もあり、「今日で、ここに来るのは最後になります。」と、おっしゃっていました。
崩壊現場や孤独死の現場は、一刻を争う現場です。その為、親族の方の立ち合いの元で現場に立ち入るのは、通常一日で終わらせる事がほとんどです。
私が捕獲器を貸し出してから、既に16日が経過していました。なぜここまで時間が掛かってしまったのか、対応が遅すぎます😔
Zさんが窓口となり現場を引き受け、主導権を握ろうとするのであれば、最後まで責任を持ってやり遂げるべきであり、率先して動けないのであれば、主導権を手放すべきです。でなければ、時間だけが過ぎていって、失われる命や、残された親族にも迷惑をかけてしまいます。
私たちが到着してから、Aさんは、親族の方に対し(これまでZさんのお手伝いという立場だったので何も言っていなかったけれど)自分と、Zさんの団体とは何の関係もないし、Zさんが親族の前で発言した内容(※1)についても重ねて、自分とは考え方が違うと説明されていました。
※1:Zさんは、Aさんと親族を前にして(当初は2匹の予定だったのが、1匹多く捕まってしまった為か)「自分たちは、Aさんと方針が違う。瀕死の猫は救わない❗️亡骸を探したりしない❗️」と、言っていたそうです。
Aさんが捕獲した3匹についても、親族の方に対し、Zさん自身が捕獲したような話しをしてあったので、親族の前で、何度も通って捕獲したのは自分ですと、Aさんが訂正されていました💦
他にも、Aさんからは、Zさんの信じられないような発言内容を聞きましたが、ここに書くことは控えたいと思います😔
私たちが室内に立ち入れる時間は、残り2時間程しかありませんでした。残された時間、Aさん含め4人で全力で作業を開始しました。
2階:寝室だったと思われる部屋
13時50分。2階の角部屋から捜索を開始しました。
ここは寝室だったようで、ベッドやテレビ、ドレッサーや箪笥などがありました。
床から天井近くまで、あらゆる家具に糞がまみれていました。
家具を汚れから守る為になのか、ワイヤーネットやプラスチックトタンを釘で打ちつけたり紐で縛ってあったので、それらを外して、狭い隙間を全て確認するまでが大変でした💦
ベッドです😔飼い主は、こんな状況の中、どうやって暮らしていたのか、想像もできません。
冷蔵庫や扇風機など、あらゆる物が蜘蛛の巣と糞尿にまみれていました。2階で生活していた頃の名残りなのか、冷蔵庫もありました。
シャンデリアも蜘蛛の巣だらけでした。捜索を続ける私たちも、蜘蛛の巣だらけになりました💦
猫のトイレは、糞で一杯でした。ギリギリまでトイレでしようと頑張っていた猫たちの気持ちを思うと、やりきれません😢
机や猫のケージ(?)と思われる物も糞尿にまみれていました。こういった物も全て動かして、隅々まで猫が取り残されていないか確認しました。
あらゆる家具が動かせないくらい、大量の糞が床に積もっていたので、みんな汗だくになりながら作業を続けました。
床一面に広がった茶色い部分は、虫です😰ヤスデではないかと思われます。死骸なのか、脱皮した外皮なのかは分かりませんが、兎に角、大量にありました💦
廊下と部屋の仕切り扉の部分です。糞が積もって固まって、動かなくなっていましたが、糞を削って、扉を閉めました。確認が終わった順に部屋を閉めていかないと、捜索中の猫が再び部屋に紛れ込んでしまう可能性があるからです。
2階:廊下
脱走防止対策の為に、全ての窓にワイヤーネットや網が取り付けてありました。
室内とは思えないほどの物で埋め尽くされていました😔
高齢の体では、この家で生活する事自体、かなり困難だったのではないかと思います😔
これでも室内です😔
2階:ケージがあった部屋
ここは、キャリーやトイレ、ケージだけの部屋でした。床は、畳だったのではないかと思います。
繁殖を防ぐ為に、ケージに入れるなどしていたのではないかと思われました。
個人で使うには、大きすぎるキャリーです😔
窓は、網が取り付けられていましたが、破れています。
飼い主が気がついていないだけで、猫達は、こういった場所から脱走していたのではないかと思われます。
1階:神棚と仏壇があった部屋
飼い主の方が亡くなっていた部屋(と聞きました)。
この部屋が一番、物が多く、ワイヤーネットが張り巡らされていましたが、ワイヤーネットの内側にも糞が大量にあり、猫たちが出入りしていた事が想像できました。ワイヤーネットを撤去したり、物を右から左、左から右へと移動させながら、猫が残されていないか確認を続けました。
写真の左下には仏壇がありました。天井付近の物をどかしてしくと、ワイヤーネットが付けられた天袋が現れました。天袋には神棚が3つあり、一番左は、お稲荷様でした😢
神様の周りも糞だらけだったので、神様に手を合わせてから、奥の方も確認しました🙏
飼い主と猫が亡くなっていたと言われた場所も糞だらけでした。その上を私たちは歩き回る事になるので、みんなで手を合わせてから作業を続けました。
隙間から、若い頃の御夫婦の写真や、かなり昔の猫や犬の写真も出てきました。数十年後に、こんな結果が待っているなんて、誰も思わなかった事でしょう😔
1階:台所
台所にも神棚がありました。兎に角、物が多くて足の踏み場もないほどでした。
裏口付近に置かれた猫のトイレも糞だらけでした😔
飼い猫でいるよりも、野良猫の方がまだ良かったのではないかと思うほどの環境でした😢
死体を保管していないか冷蔵庫も開けてみましたが、ありませんでした。
冷凍庫の中に、2022年1月28日の日付のパスタがありました。ということは、少なくともこの日までは、飼い主は生存したと思われます。警察に発見されるまで2週間ほどです。あともう少し早ければ、亡くなった1匹も助ける事ができていたかもしれません😔
棚のあちこちにも、置かれていた箱の中にも糞がありました。
1階:介護をされていた部屋
この部屋は、ここにも仏壇と神棚がありました。神棚が3つあった部屋に隣接していたので、重たくて動かせなかった箪笥の裏側は、この部屋の開いた穴から確認をしました。
捕獲した猫3匹
親族の方の時間が許した午後4時まで。全ての部屋を確認しましたが、猫は発見されませんでした。骨壷や死体の類もありませんでした。
Aさんから、室内から捕獲した際の3匹の写真を頂いたので、掲載しておきます。女の子には赤い首輪、男の子には青い首輪が付いていました。
この他に、警察が立ち入った際に逃げた1匹、そしてシャムミックスにそっくりな1匹を、Aさんが引き続き捜索をしています。
亡くなっていた猫を合わせても6匹ほど。不妊・去勢手術をしていない場合、通常、もっと繁殖しているものなので、飼い主は、オス・メスの区別を首輪で行い、発情期は隔離するなどしていたのかもしれません。外に脱走していた猫の他にも、劣悪な環境下なので病気で早死にしていたのかもしれません😔
所在地は、非公開で掲載許可をいただいている為(江戸川区のどこかです)公開はできませんが、猫の首輪には、幅5cmくらいのネームタグが電話番号入りで付けられています。もし、見かけない猫や、似たようなネームタグを付けた猫を目撃するようになった時には、お知らせいただければ幸いです🙏
参考:2016年に江戸川区平井で発生した(猫の崩壊現場)(犬の崩壊現場)です。犬の崩壊現場も、飼い主が亡くなり収束を迎えました。
みなさんに知っておいて欲しいのは、このような現場は、氷山の一角だという事です。
誰に助けを求める事もできず、犠牲になっていく動物たちの事を思うと、胸が締め付けられる思いです😔
個人・ブリーダーに問わず、どんなに酷い方法で飼育していたとしても、所有権という壁に阻まれてしまい、救う道は、飼い主が亡くなるのを待つ事くらい・・・それが今の日本の現状です。
未婚率も高くなり一生一人暮らしを続ける人もいるでしょう。
いつかは伴侶が亡くなり、親族にも頼れない、親族すらいなくなってしまうという時も来るかもしれません。
それは誰にでも、いつか訪れる可能性があるのです。
そんな日の為に、どうかペットを飼っている方は、頼りにできる人を一人だけでも良いので、身近に見つけて、交流を続ける大切さを忘れないでください😢
このような現場では、本人がSOSを出す事は非常に稀です。精神的な病、肉体的な病、もしかしたら認知症に陥ってる可能性もあるからです。そんな時、自分の代わりに、自分や飼っている動物たちを救ってくれる人を、一人でも作っておいて欲しいと、心から願っています🙏